すべてがうまくいく「幸せ」のエッセンス‥ヒプノセラピーによるインナーチャイルドの癒しについてシリーズで綴っています。
今回は「抱きしめられなかった子ども」をインナーチャイルドに抱えている例です。
皮膚に優しいタッチで触れられることが脳に良い影響を及ぼすことは、アロマセラピスト養成コースやベビートリートメントのコースのなかでも大切な項目としてお伝えしてきました。
胎児期に人の脳と皮膚は外肺葉を通じて形成されるため「皮脳同根(ひのうどうこん)」と呼ばれています。皮膚を優しく撫でることは脳(心)を優しく撫でることと同じであり、それゆえに皮膚への優しいタッチングは慰めや癒しの感覚を与えることができます。
人の皮膚の深部には「パチニ小体」という感覚受容器があるので、擦られたり、抱きしめられることで脳は心地よさを感じます。
実際に優しく触れてあげることで体の痛みが癒されたり(痛みのゲートコントロール説)、オキシトシンという神経伝達物質が放出されて心の緊張が和らぎ、幸福感を感じることなども研究されています。
看護師さんが行う「セラピューティック・タッチ」、アロマセラピストが行う「アロマトリートメント」、ヒーラーが行う「ハンドヒーリング」、お母さんが赤ちゃんに行う「ベビーマッサージ」、そして子どもが転んで擦りむいたところにお母さんがしてあげる「痛いの痛いの飛んでけ!」のおまじないも、すべては「優しく触れてあげる」ことに根ざしています。
前回のネグレクトのケースでは、母親から温かく抱きしめられるなどの行為を通じて身体に触れられる機会が極端に少ないため、母子の愛着が形成されないまま「皮膚への飢渇感」を抱えて成長することになります。
「皮膚への飢渇感」と言う表現は、日本人には馴染みが薄いかもしれませんが、スキンシップの盛んな欧米には「スキンハンガー」という言葉があるくらい、触れ合う機会が少ないことへの飢えに対して敏感です。
子どもの頃に触れ合いが足りていないと、後にその飢渇感は早すぎる年齢での性交渉や、ただ身体に触れてもらいたいがための無節操な性交渉につながることがあります。特に女性においては、それが人生の転落や犯罪の誘因となる事があります。周りから「自分をもっと大切にしなさい」と言われても、どうすれば良いのか分からないのは潜在意識に原因があるからです。
そもそも、皮膚の触れ合いは哺乳類にとってなくてはならないものであり、人間の祖先である猿の毛づくろいにもその原型を見ることが出来ます。
哺乳類の子どもは触れ合いがないと死んでしまう、これは大げさではなく本当のことです。触れ合うことがどれだけ大切で、それがないということはどれだけ苦しく辛いことか、放っておかれた子どもはミルクやオムツの世話と同じくらい切実に、優しく抱きしめられ、撫でさすってもらいたいと願っています。
インナーチャイルドに退行した時、多くの方は「お母さんに抱きしめてもらいたい」「お母さんと手をつなぎたい」と伝えてきます。
インナーチャイルド療法では常に「小さな子ども」として対話をするので、時に本当に小さな子どものように話してくれることがあります。
「○○(自分の名前)はね、お母さんにぎゅ~ってしてもらいたいの」
「そう、○○ちゃんはお母さんにぎゅ~ってしてもらいたいんだね。じゃあ、そうしてもらおうね」
「うん」
「お母さんにぎゅ~ってしてもらうとどんな気持ちになる?」
「あったかい」
「あったかいんだね。お母さんのあったかさをいっぱい感じてみようね」
「うん」
こうした場面ではクライアントは温かな涙を流されることが多く、インナーチャイルドが抱えていた愛情不足の思いが涙とともに癒されていくのが感じられます。
ぎゅっと抱きしめてもらう、ただそれだけの事に、とてつもなく大きな意味があるのを毎回気づかされています。
インナーマザーやインナーファーザーに優しく抱きしめてもらう体験は、その方の心の奥深くにしっかりと根づき、今と未来を変えてゆく素晴らしい流れを作り出します。
抱きしめられなかったインナーチャイルドを抱えているケースでは、自分の子どもが出来てもうまく抱きしめられないことがあります。
抱きしめようと思えば思うほど、余計にぎこちなく、心がついていけなくなり、とても辛くなってしまう、そう伝えてくれた方もいました。
抱きしめてもらえなかったインナーチャイルドへ。
インナーチャイルドがずっと望んでいたことをヒプノセラピーを通じて体験なさってください。
人は温かい。人に温かく抱きしめられることで、心の奥にわだかまっていたものが不思議なほど消えてなくなっていきます。
次回もインナーチャイルドの癒しについて書きますね。